第III章 動詞(V)の拡充


LESSON 14  V拡充子{進行}: PROG(be-ing)

 14-1 [V拡充子{進行}:PROG(be-ing)] 
 動詞(V)をふくらます任意のV拡充子として第3番目のものは「V拡
充子{進行}」(V EPD {Progressive})あるいは PROG、つまり、be-ingで
す。この形は「〜しつつある」という「進行」の意味を動詞(V)に加え
ます。

   (1)  The computer is writing a novel now.
     (そのコンピューターは今小説を書いている)

 14-2 [樹形図] 
 上の例文 (1) は、おおむね次のようにして作られます。

   (2)  The computer + PRS + be-ing +  write a novel + now
         ↓     ↓     ↓
   (3)  The computer       is     writing a novel      now.(=(1))

 また、上記動詞(V)部分の樹形図は、次のようなものとなります。

   (4)   (is writing a novel)
            V
           /  \
        EPD[AGR]   V
         (PRS)  /    \
            EPD[PROG] V
            (be-ing) (write a novel)

 上で新しく生まれる「Ving形」(Ving)で、-ing が付加される左端の
語は、伝統的に「現在分詞」と呼ばれてきましたが、むしろ「進行分詞」
(progressive participle)と呼ぶべきでしょう。

 14-3 [PROG(be-ing)のいろいろな意味] 
 上で述べたように、be-ing が表す基本的な意味は、進行(中の動作)
です。

  (i) 進行(中の動作)
   (5)  Someone is wiretapping.
     (誰かが盗聴しているぞ)
   (6)  You're not answering my question.
     (君は私の質問に答えていないよ)

 しかし、動詞(V)が持つ微妙な意味合いや、前後につく副詞(AD)
の影響で、be-ing が「進行」以外の意味を持つように見えることがあり
ます。例えば、瞬間的な動作を表す動詞(V)に be-ing がついた場合に
はその動作の反復くりかえしを表します。

  (ii) 反復動作(Repeated Action)
   (7)  A light was flashing.
     (灯がチカチカを何度もまたたいていた)
   (8)  Tommy is cutting his piano lessons these days.
     (ここんとこトミーはピアノの練習サボリつづけだ)

 また、come, go, leave, arriveなどの往来発着を表す動詞や、graduate,
have a baby などの動詞に be-ing がつくと「(手配済みの)確定未来」
を表します。(鈴木・安井 p.202)

 (iii)(手配済みの)確定未来(Schedule)
   (9)  My parents are leaving tomorrow.
     (両親は明日発つことになっています)
   (10)  Everybody except Bill is coming to the party.
     (ビル以外はみんなパーテイに来る)

 また、be-ing が always/usually/continually などの副詞(AD)を伴
うと「習慣」を、それも「不満・いらだち」とともに表す表現となります。

  (iv) 不満・いらだち(Complaint)
   (11)  Mary is always leaving her dirty socks on the floor.
     (メアリーはいつも汚い靴下床に脱ぎっぱなしだ)
                         エイザー上、p.22
   (12)  They're always making an old man of me.
     (あいつらはいつもワシのことを老人扱いだ)

しかしながら、(ii)〜(iv)はすべて、少なくとも広義の「進行」として分
析できるものです。

 14-4 [使用不可のPROG(be-ing)] 
 次のように、もともと「進行」の意味を持ついわゆる状態動詞の場合に
は、これにbe-ingを加え拡充することは、ふつう、できません。

   (13)  * I'm knowing the news.
   (14)  * He is having a big house.

 ただし、「一時的な状態」を表すとき、つまり、「限りなく動作に近い
状態」を表すときには、次のように進行形が認められます。

   (15)  We're living in London at the moment.
     (我々は今はロンドンに住んでいます)
   (16)  Tommy is being a bad boy today.
     (トミーは今日は悪い子です)

 このように、ある時は状態を、またある時は動作を表す動詞(V)があ
る以上、「これこれの動詞(V)は進行形をとる/とらない」という説明
では不十分かもしれません。全ての動詞(V)は、その意味が「動作」に
近ければ進行形をとり、「状態」に近ければとらないとすべきかもしれま
せん。次の例参照。

  (17)a. I can hear it now.   (Scheffer, p.69) 
     (私にはそれが聞こえる)
    b. The judge is hearing a case just now; you'll have to wait.
     (ただいま、裁判官は審問中です。しばらくお待ちを)

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