�｢5-1-NT　［動作・状態］ 
         鈴木・安井泉(pp.56-57)によれば、動作、状態の別は一般に自制可能（self-
controllable）かどうかで区別される。動作を表す動詞（Ｖ）は、一般に自制可能である
ため命令文が可能であるが、状態を表す動詞（Ｖ）はそうでないため命令文は不可となる。
             (i)命令文 
                1)  Slice the salami.
                2) *Know the answer.
          その他、動作を表す動詞（Ｖ）は一般的に進行形（BE-ING)になれるが、状態
を表す動詞（Ｖ）はなれないという違いもある。(cf. 14-3)
            (ii)進行相
                3)  He is slicing the salami.
                4) *He is knowing the answer.      (同上  p.56)
         動詞（Ｖ）を、動作／状態といった単純な区別ではなく、その文法的なふるま
いの特徴によっていくつかに下位分類する研究もある。例えば、Vendler,Z.(1967)によれ
ば、動詞自体が本来的に持つ lexical aspect によって、run型の動作動詞(activity)、
draw a circle型の完成動詞(accomplishment)、 reach the top型の達成動詞(achieve-
ment)、love型の状態動詞(state)の４種があるという。また、Celce-Murcia & Larsen-
Freeman(1999, pp.120-122)には、さらに、これらの動詞の lexical aspect と perf, 
prog など grammatical aspect との相性関係についての解説がある。また、Levin,B.
(1993)は、動詞をその意味の類似性によって分け、そのグループの統語特徴を調べている。

 �｢5-2-NT　［動詞化子（VZ）］ 
         例えば、have a headache の have だけをＶとするべきでない。なぜなら、  
have はそれ自体では意味的に完了しておらず、語ではあっても、主形態素というよりは
むしろ副形態素と呼ぶべきものだからである。つまり、have a headache のhave は名詞
（Ｎ）を動詞（Ｖ）に変える転換子（N-V CVT）と考えられ、樹形図は本文中にものべ 
たように次のようなものとなる。
              1) (have a headache)
                     Ｖ
                 ／      ＼
              CVT[N-V]      Ｎ
              (have)       (a headache)
         この時、 have の働きは、限りなく次の in や -fulのそれに近い。
              2)   (in Chicago)
                     A(D)
                  ／      ＼
              CVT[N-A(D)]   Ｎ
              (in)        (Chicago)
               3)  (careful)
                       Ａ
                   ／      ＼
                 Ｎ        CVT[N-A]
                (care)      (-ful) 
         つまり、in や-ful がそのパートナーに名詞（Ｎ）を要求してin Chicagoや 
careful に変わるプロセスは、Valency/Expectancy  という点で have がそのパートナー
に名詞（Ｎ）を要求してhave a headache  に変わるプロセスと同じである。ここでのポ
イントは Valency/Expectancy の方向性はむしろ副形態素から主形態素へと流れている 
という点である。結局、have は、in, -ful と同様にそのパートナーに名詞（Ｎ）を要 
求する副形態素であり、この本の定義によれば、名詞（Ｎ）を動詞（Ｖ）に変える転換 
子（CVT）なのである。
         学習英文法として Valency/Expectancy の方向性に従って動詞（Ｖ）の下位区
分をすることは有意義であると思われる。類推（analogy)などのための豊富な情報を提 
供するからである。 従って、この本では、Ｖの中で「Valency／Expectancyの発信核」 
となる部分を「動詞化子」（Verbalizer, VZ）と呼び、この動詞化子（VZ)の種類を動詞
型として７つに分け提示する。(cf.10-2)

 �｢5-3-NT-(A)　［BE動詞（Ｖbe）］ 
         鈴木・安井泉（pp.114ff)によれば、BE動詞（Ｖbe)はさらに下位区分され、次 
のようになる。
         be 動詞 → a.主動詞の be → a.連結詞の be → a.外延性の be
                    b.助動詞の be    b.存在を示すbe   b.内包性の be
ただし、学習英文法では、上のような分類は細かすぎると思われる。「現在形/過去形の
呼応」、「ＮやA(D)を従えるVZ」、「オペレーターとしての働き」などがむしろポイン 
トとなろう。

 �｢5-3-NT-(B)　［BE動詞（Ｖbe）と一般動詞（Ｖcom）］ 
          大塚・中島（p.689)によれば、main verb（本動詞）は、OED の用語で、助動
詞（auxiliary verb)と区別してふつうの動詞をさす。実動詞（full verb）とも言う。
Declerck, R.(p.48)も auxiliaries に対するものとしてlexical verb と呼ぶ。
             1) I have no money.      (lexical verb)
             2) I have lost my money. (auxiliary verb)
          この本では、BE動詞(be-verb)に対するものとして一般動詞（common verb)と
いう呼び名を使う。